動画における「ビットレート」の意味について解説します。
ビットレートとは?
動画におけるビットレートとは、「1秒間にどれだけ情報を詰め込んでいるか」を表します。
ビットレートが高いとどうなる?
基本的に、ビットレートが高ければ高いほど、画質・音質が向上します。
※後述する「コーデック」とも大きく関わってきますが、基本的には向上します
ビットレートには2種類ある
ビットレートは「映像」「音声」、それぞれ別々に割り当てられています。
- 「映像」に割り当てるビットレートを高くすれば「画質」は良くなりますし、
- 「音声」に割り当てるビットレートを高くすれば「音質」が良くなります。
さらに、2つのビットレートを合計したものを「オーバルビットレート(総ビットレート)」と呼んだりします。(このオーバルビットレートが俗にいう「動画のビットレート」です)
▲動画ファイルのプロパティを開いて「詳細」タブを開けば、「ビットレートがいくらなのか」を見れます (ただ、Windowsのこの機能は正直当てにならないので、MediaInfoなどの動画解析ソフトを使った方が吉です) |
つまり、
オーバルビットレート = 映像ビットレート + 音声ビットレート
という計算式になります。
なので一概に「ビットレートが高い!」と言っても「映像のビットレートが高い」だけで「音声のビットレートは高くない」ということもあります。
つまりそういう場合は、「画質は良いけど音質は良くないなぁ・・」な動画になります。
基本的に「音声」は「映像」に比べて、ファイルサイズが大幅に小さいので、「音声」のビットレートを大幅に上げても全体のファイルサイズ的にはそんなに変わりません。
なので「音声」については非圧縮(リニアPCM)でエンコードされる事が多かったりします。
画質との関係
「映像」のビットレートが高ければ高いほど、ピクセル全てに正確な色情報を割り当てられます。
結果的に
- 高ビットレートだと画質が良くなり、
- 低ビットレートだと画質が悪くなります。
▲高ビットレート(12Mbps、2.57MB) | ▲低ビットレート(90kbps、20KB) |
※実際にはgif動画なので正確なビットレートではありません
また、低ビットレートの場合、全てのピクセルに均等にビットを割り当てているとビットが足りなくなってしまうので、同じような色が連続するシーン(青い空が延々と広がってるシーンとか)などで、優先的にビットを削減しようとします。
その結果、そういうシーンでは「ブロックノイズ」↓が発生しやすくなります。
▲ブロックノイズ例(ブロック状のノイズ)
音質との関係
音声でのビットレートは
サンプリングレート(Hz)× ビット深度(bit)= ビットレート(bps)
という式で表せます。
例えば、音をデジタルデータとして録音するとき、
- どれくらいの間隔で録音するのか(=サンプリングレート)
- 1つの間隔当りにどれだけのデータを保存するか(=ビット深度)
を決めて録音します。
例えば、
- サンプリングレート:44000Hz
- ビット深度:24bit
なら、1秒間に44000回、音を分割して録音し、44000回の1回あたりに24bitを使って音を録音します。
つまり、音質を上げたいなら、「サンプリングレート」か「ビット深度」を上げればOKということです。
- サンプリングレートを上げる → 滑らかな音になる
- ビット深度を上げる → 音の細かさ・大小などの表現力が上がる
参考:サンプリングレート・ビット深度・ビットレートの意味と関係性
コーデックとの関係
先ほど「ビットレートが高ければ高いほど、画質・音質は向上する」と言いましたが、画質・音質は「コーデック」とも大きく関わってきます。
「コーデック」というのは「映像」や「音声」を圧縮するための「圧縮のアルゴリズム」みたいなモノです。
例えば、「H.264」という映像コーデックは、Youtubeやニコニコ動画などでも使用されている超有名なコーデックですが、
(追記:今現在は使われていません・・)
「H.264」より「ファイルサイズ当りの画質」を向上させた「H.265」というコーデックがあります。
「H.265」は「H.264」の半分程度のビットレートで、「H.264」と同等の画質を得られます。(圧縮率が2倍高いということ)
例えば、
- 「H.264」コーデックで「2Mbps」のビットレートを使用した動画
- 「H.265」コーデックで「2Mbps」のビットレートを使用した動画
という2つの動画がある場合、同じビットレート(ファイルサイズ)なのに、画質は「H.265」の方が2倍綺麗になるという事です。
▲H.264とH.265を比較した画像 (文字の部分などがかなり違います) |
他にも、DVDで使用されている「MPEG-2」というコーデックを使用した動画と、「H.265」を使用した動画では、画質に4倍近くも差が出ます。
更に他にも、「MPEG-2」の前身である「MPEG-1」とでは画質に8倍近くも差が出ます。
つまり、「H.265」の動画と同じ画質を「MPEG-1」で実現しようとしたら、「H.265」の8倍のビットレートが必要となるという事です。
- 非圧縮動画
- 無圧縮動画
と呼びます。(「Raw動画」とも呼びます)
前置きが長くなりましたが、結局何が言いたいかというと、
「圧縮率の良いコーデックを使用すれば、低ビットレートでもそこそこの画質・音質を保つ事ができるよ!」
という事であって、
つまり、画質や音質の良さは、
画質(音質)=ビットレートの高さ × コーデックの種類
という式で決まるということです。
参考:動画コーデック(H.264・VP9・MPEG・Xvid・DivX・WMV等)の種類と違い
参考:音声コーデック(MP3・AAC・WMA・WAV・Vorbis・FLAC等)の種類と違い
解像度との関係
解像度が高い動画ほど、高ビットレートが必要になります。(1フレーム/秒当たりの情報量が多くなるので)
例えば、
- 「1280×720」の動画
- 「1920×1080」の動画
という2つの動画がある場合、後者の方がビットレートを多く必要とします。「1280×720」で十分なビットレートでも、「1920×1080」では不十分という事も有り得ます。
「解像度」に対しての「推奨ビットレート」は、Youtubeで推奨されているビットレートが参考になります。
アップロードする動画の推奨エンコード設定(詳細) – YouTube ヘルプ
→https://support.google.com/youtube/answer/1722171?hl=ja
フレームレートとの関係
フレームレートが倍になれば、必然的にビットレートも倍になります。
なぜなら「1秒当りのフレーム数」が倍になるからです。
例えば、
- 30fps(2Mbps)
- 60fps(2Mbps)
という2つの動画がある場合、
60fpsの方は「2Mbpsで60枚」を表示しなければならないのに対し、
30fpsの方は「2Mbpsで30枚」を表示すれば良いので、実質、半分のビットレートで済みます。
参考:フレームレートとは?VFR(可変)とCFR(固定)の違い
ビットレートは上げすぎるのも良くない
ビットレート=ある一定以上は上げても無駄
ビットレートは上げれば良いというものでもありません。
例えば、元々の画質が100の動画を、超高ビットレートでエンコードしたとしても画質は100以上にはなりません。(できても99など)
ビットレート5Mbpsで画質が95なのに、ビットレート10Mbps割り当てても画質が96にしかならないなんて事は良くあります。
こういう場合、ビットレート10Mbpsなんて割り当てても無駄なだけです。
ビットレートは、元動画の画質・音質を維持するためのものです。底上げするためのものではありません。
ビットレートが高い=再生負荷が高い
ビットレートは高ければ高いほど、PCに再生負荷が掛かります。
無駄に高ビットレートにすると「画質は普通なくせに、再生負荷はめちゃくちゃ高くて、ファイルサイズもムダにデカい」という最悪な動画になってしまいます。
なので、自分で保存する用としてエンコードする場合は、
- 動画の解像度
- 動画の内容
などから割り当てるビットレートをきちんと考えましょう。
関連:動画のビットレートを計算する方法【ファイルサイズとの関係】
ただし、Youtubeに投稿したい場合には、Youtube側で勝手にエンコードされて適性なビットレートに調整してくれるので、とりあえず超高ビットレートでエンコードしておけば問題ありません。
まとめ
まとめると以下の様な感じです。
画質重視の動画にしたい場合
→映像のビットレート上げる
音質重視の動画にしたい場合
→音声のビットレートを上げる(サンプリングレート、ビット深度を上げる)
動き重視(滑らかさ)の動画にしたい場合
→動画のフレームレートを上げる(単純にフレームレートを倍にするとビットレートも倍必要になる)
参考:フレームレートとは?VFR(可変)とCFR(固定)の違い
参考:動画のフレームレート(fps)を変更する方法
ちなみに、ビットレートのエンコード方式である、
- CBR
- VBR
- ABR
によっても、「画質」や「音質」は左右されるので、これについても注意しましょう。
参考:CBR(固定)とVBR(可変)とABR(平均)の違い【ビットレート】
このページの情報は以上です。
コメント
ささいなことですが、通常は
1 kbps = 1000 bps
1 KB = 1024 B
なので、MB表記にする時は考えないと不正確ではありますね