DRM(デジタル著作権管理)における
- コピーコントロール
- アクセスコントロール
の違いについてのメモです。
DRMとは?
DRMは、「”著作物”を守るための著作権保護技術」全般のことを指します。
”技術全般”なので、一言でDRMと言っても色々な種類のDRMがあります。
ソフト面で言えば、
- CSS
- AACS
- Cinavia
- CCCD
- CCI
- CPRM(コピーフリー、ダビング10、コピーワンス、コピーネバー等)
- ファイル単位のDRM
- FairPlay(.m4p)
- Windows Media DRM(.wma、.wmv .asf)
- Marlin DRM(.mnh)
- OMA DRM(.oma)
- Adobe LiveCycle(.pdf)
- 電子書籍系DRM
- Kindle DRM(.azw .mobi)等
- 楽天Kobo(.epub)
- ・・etc
- ストリーミング系のDRM
などがDRMに含まれます。
また、ハード面で言えば、
- HDCP
- DTCP(DTCP-IP)
- B-CAS(CGMS)
などが含まれます。
あと、広義の意味で言えば、
- ドングルキー
- 最近のパソコンソフトでよく使用される認証の形。USBを挿す事でソフトのDRMを解除する仕組み。(Auto CADとかそう)
- アクティベーション
- シリアルキーを入力したり、パソコン構成から一意に特定出来るナンバーを作って、ネット経由でソフトのDRM解除を行う仕組み。
などもDRMと呼べます。
DRMの分類
先述のように、色々な種類があるDRMですが、これらは全て以下の2種類に分類できます。
- コピーコントロール
- アクセスコントロール
コピーコントロールとは?
コピーコントロール(コピー制御)は文字通り、コピーを制限するための技術を指します。
例えば、地上デジタル放送は「ダビング10」というコピー制御情報(CGMSと言う)も一緒に付加して、電波として流しています。
これをコピーしようとしても、1世代までならコピー可能ですが、孫コピーになると制御が掛かってコピー自体できません。(DVDの場合はCPRM対応のものじゃないと1世代のコピーさえ出来ない)
こういう風に「コピー自体を制限する技術」の事をコピーコントロールといいます。
○コピーコントロールの例
- CPRM(CGMS)
- CPPM ※アクセスコントロールでもある
- CCCD
- DTCP(DTCP-IP)※アクセスコントロールでもある
- マクロヴィジョン方式
- カラーストライプ
- CCI
- ・・etc
など。
アクセスコントロールとは?
アクセスコントロール(アクセス制御)は、コンテンツ自体を暗号化(スクランブル化)し、視聴をできなくする技術を指します。
例えば、ブルーレイにはAACSというアクセス制御が使用されていますが、ブルーレイの中にある動画ファイル本体(.m2ts)は、AACSが掛かったままでも普通にファイルとしてコピー出来てしまいます。
こういう風に「コピーは出来るけど、中身を暗号化して視聴できなくする技術」の事をアクセスコントロールといいます。
○アクセスコントロールの例
- CPRM(CGMS)※コピーコントロールでもある
- CPPM ※コピーコントロールでもある
- CSS
- AACS
- Cinavia
- HDCP
- DTCP(DTCP-IP)※コピーコントロールでもある
- ファイル単位のDRM
- ストリーミング系のDRM
- ・・etc
など。
それぞれの違いは?
一言で言うと、
- コピーコントロール:コピーさせない
- アクセスコントロール:視聴させない
です。
引用:文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第6回)議事録[資料2]
これらを回避するのは違法?
「コピーコントロール」を回避するのは違法ですが、「アクセスコントロール」を回避するのは違法ではありません。
ただし、「アクセスコントロール」を回避した上で、コンテンツ自体をコピー(私的複製)するのは違法となります。
つまりまとめると、
- 「アクセスコントロール」なDRMの解除 =合法
- 「アクセスコントロール」なDRMの解除+コピー(リッピング)=違法
- 「コピーコントロール」なDRMの解除 =違法
- 「コピーコントロール」なDRMの解除+コピー(リッピング) =違法
※「違法=著作権侵害」の事を指します
と風な感じになります。
つまり、DRMの種類によって合法にもなるし違法にも成り得るという事です。
また、
- アクセスコントロールの解除できるソフトを配布
- コピーコントロールの解除できるソフトを配布
なども日本では違法となります。
つまり、”日本”ではDRMを解除できるソフトは入手できないという事です。
ただし、”日本”だけの話なので、”海外”でDRM解除ソフトで配布しても違法ではありません。(海外サーバーから配布すれば問題ないという事)
あと、ここで勘違いしてはいけないのが、「DRM解除ソフトを配布するのは違法だけど、DRM解除できるソフトを使用するのは違法ではない」という点です。
ちなみに2012年10月1日以前は、「アクセスコントロール」は「技術的保護手段」の対象ではなかったので、
2.についても合法だった(「技術的保護手段」ではないので、著作権法第30条の「私的使用のための複製」に当てはまるため)のですが、「著作権法」の改正により違法になりました。
アクセスコントロールとコピーコントロールに関わる法律について
それぞれのコントロールに関与する法律は以下の2つです。
「不正競争防止法」については、「アクセスコントロール」と「コピーコントロール」の両方に該当します。
「著作権法」については、「コピーコントロール」にのみ該当します。
図にすると以下の様な感じ。
著作権法 第30条 第1項 第2号では、「技術的保護手段の回避」自体を禁止しているので、著作権法では、DRMを回避した時点で違法となります。
しかし、不正競争防止法では、第1項第10号で「コピーコントロール」について、第1項第11号で「アクセスコントロール」について定められているのですが、どちらの項にも、
他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
と記載されています。
つまり、不正競争防止法では、DRM解除できるソフトを配布する事は禁止していますが、DRM解除する事自体は禁止していないのです。
なので、「アクセスコントロール」なDRMを解除しても違法にはならないのです。
2012年に行われた著作権法の改正では、今までは「アクセスコントロール」なDRMを解除してリッピング(コピー)するのもOKだったけど、「アクセスコントロール」を解除してリッピングするのだけは違法にしよう!ということになったのです。
リンク先引用文:
「平成24年10月1日からは、個人的な利用を目的に行う場合であっても、DVDのコピー防止機能を解除して、自分のパソコンに取り込むこと(いわゆる「DVDリッピング」)は、刑罰の対象ではありませんが、違法となります。」
なので、「アクセスコントロール」を解除するの自体は違法じゃないけど、「アクセスコントロール」を解除してリッピングするのは違法になったというわけです。
TS抜きは違法じゃないの?
TS抜きは、違法ではありません。
なぜなら、コピー制御(CCI)を”回避”しているではなくて、”無視”しているだけだからです。
まとめ
1.DRMの種類によっては、DRM解除する事自体は違法ではない
2.DRM解除すると、どのような場合であってもコピー(リッピング)すると違法になる(私的利用目的であってもダメ)
このページの情報は以上です。
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