もう2年以上前の話ですが、ソースネクストという会社から「Vegas Proという動画編集ソフトをさしあげるのでレビューしてくれませんか?」とお願いされました。
それに対して深く考えず「わかりました!」と二つ返事したものの「そういえばレビューするの忘れてたな・・」というのを最近思い出した(遅すぎる)ので今更ですがレビューしたいと思います・・。
Vegas ProとAviUtlの違い
あくまで私(動画のプロではない個人)が使った感想としては以下のような感じです。
0円 | 価格は? | 6万円~ |
---|---|---|
○ | 使いやすさは? | ○ |
✕ | 導入の手間は? | ○ |
✕ | 動作の軽さは? | ○ |
制限なし | 同時起動数は? | 1ライセンスで2台まで |
✕~ ○ | 動作の安定性は? | ○ |
✕ | 録音時の挙動は? | ○ |
✕ | 音声エフェクト機能は? | ○ |
○ | 映像エフェクト機能は? | ✕ |
○ | 3D編集機能は? | ✕ |
後述 | エフェクトのかけ方 | 後述 |
✕ | カット機能は? | ○ |
○ | ネットの情報量は? | ✕ |
順番に書いていきます。
価格
- AviUtl:
→無料。 - Vegas Pro:
→大体6万円~くらい。
価格については比べるまでもないですね。
ちなみにVegas Proは普通に買うとかなり高価ですが、年に何回か行われる激安セールだと1万円以下で購入できたりします。なので購入するならそのときを狙ったほうが良いです。
使いやすさ
どちらのソフトも、動画編集ソフトの中ではかなり使いやすいほうですが
強いて言うなら
- AviUtlは機能がシンプルで少なめな分、ある程度便利に使いこなせるまでが早い
→けれど使いこなせるようになると「こうできればいいのになぁ」みたいに思うことが増えてくるかも
- Vegas Proは機能が多めなので、ある程度便利に使いこなせるまで時間がかかる
→けれど使いこなせるようになるとかなり作業がはかどる
という感じです。
導入の手間
- AviUtl:
→最低限使いこなすために必要な準備(プラグインの導入など)が多いので面倒くさい。 - Vegas Pro:
→1つのインストーラーを動かすだけ。
AviUtlは導入が鬼のように面倒くさいですが、Vegas Proは簡単です。
動作の軽さ
- AviUtl:
- HDだと余裕でサクサク。
- フルHDになると割とカクつく。
- 4kはムリ。
- Vegas Pro:
- フルHDでも余裕でサクサク。
- 4kもPCスペック次第でサクサク。
AviUtlは2019年10月にバージョン1.1に上がってから、フルHDでもそれなりにカクつくことなく編集できるようになりましたが、それでもVegas Proなどの有料動画編集ソフトに比べるとかなりカクつきます。
Vegas Proにはさらに
- グラボを搭載したパソコンでプレビューが高速になる設定がある
- プレビュー画質を変更することでプレビューを高速にする設定がある
という感じで「低スペックなパソコン」でも「高スペックなパソコン」でも快適に動作するための設定がいろいろあったりします。
というかAviUtlは32bitソフトなので、どうしてもメモリの限界があるんですよね。
ただ32bitアプリでも4GB以上のメモリを活用することは出来るので、その対応をしたテスト版を公開してみました。
映像キャッシュを共有メモリで確保するようにしただけなのですがビルド環境が変わっている等ありますのでひとまずテスト版としています。— KENくん (@__kenkun) August 18, 2019
AviUtl更新についての勘違いの例です
・ 64bit化だーー!やったーーーーーーー!!!!!
→いいえ メモリを4GB以上使える=64bitである ということではありません・メモリ上限が無くなったことで動作が軽くなる!
→いいえ そのメモリを使って動作を速くする設計をしないと軽くはなりません— ePi (@ePi5131) August 18, 2019
同時起動数
- AviUtl:
→制限なし。 - Vegas Pro:
→1ライセンスで2台まで。
AviUtlに制限がないのは当たり前として、Vegas Proもユーザーも優しい仕様になっています。
というのも、例えばAdobe Premireとかだと1ライセンスで1台までしか同時起動が許されてなかったりするからです。
Vegas Proの場合、1ライセンスで2台までOKなので、例えば「家族と割り勘で購入して2人で使う」みたいなこともできます。(それが規約的にどうなのかはわかりませんが)
動作の安定性
- AviUtl:
→安定している。しかし編集中にプラグインや外部スクリプトを使えば使うほど、動作が不安定になりがち。 - Vegas Pro:
→安定している。
AviUtlは
- AviUtl本体
- 拡張編集プラグイン
の2つしか使わないのなら動作はかなり安定していますが、編集中にプラグインや外部スクリプトを使えば使うほど、動作が不安定になりがちな気がします。
逆にVegas Proは編集中に落ちたりしたことがないので動作はかなり安定していると思います。
録音時の挙動
これYoutuberとかが気になる点だと思うんですけど、どちらのソフトも
- 録音ボタンを押してマイクで録音する
- そしてその音声をタイムラインに自動で追加する
みたいな機能があるんですが(AviUtlの場合は「簡易録音」というプラグインを導入する必要がありますが)、録音した際に録音した音声がタイムラインに自動追加される”位置”が異なるんですよね。
▲Vegas Proの場合:録音を開始した位置に自動追加される | ▲AviUtlの場合:レイヤー3の最初に自動追加される |
具体的にいうと
- AviUtlの場合:
→どこから録音を開始しようとも必ず、レイヤー3の最初に追加される
(しかも何回も録音してると別のレイヤーに追加されたりもする。おそらくバグ) - Vegas Proの場合:
→録音を開始した位置に追加される
という感じです。
なのでAviUtlの場合、録音を押した後、自分で音声を移動させないといけません。
音声エフェクト機能
これはダントツでVegas Proが勝っています。
元々Vegas Proを開発していた「Sony Creative Software」が音声編集ソフトも開発していたということもあって、Vegas Proは「DAWソフトとしても使えるレベルじゃないの?」というレベルで音声編集機能が優れています。
例えばVegas Proには
などのような便利な音声編集機能が大量についていますが、AviUtlにはついていません。
AviUtlの音声エフェクトはかなり低レベルな上に、音声編集機能もかなり貧弱です。
ただ、AviUtlでもVSTプラグインを読み込めるプラグインを使えば、割と高度な音声エフェクトが使えたりしますが
VSTプラグインについても以下のように違いがあります↓。
AviUtl | Vegas Pro | |
---|---|---|
相性の問題で使えないVSTプラグインもある | VSTプラグインの互換性 | ほとんどのVSTプラグインが使える |
できない (プロジェクトを保存しても設定がリセットされてしまう) | VSTプラグインの設定保存 | できる (プロジェクトを保存すると設定も保存される) |
映像エフェクト機能
これはダントツでAviUtlが勝っています。
Vegas Proにあるエフェクトは大抵AviUtlにもありますが、AviUtlにあるエフェクトはVegas Proにはなかったりします。
Vegas Proは種類が少ない上に拡張性もありません。(あとから追加もできない)
(2020年06月11日追記)OpenFXに対応したプラグインなら他社製のエフェクトでも追
▲Vegas Proで使える映像エフェクト全種類(対してAviUtlはこれの10倍以上あります) |
3D編集機能は?
AviUtlには「カメラ制御」といって3Dちっくな編集ができる機能があります↓。
それに対してVegas Proにはこのような機能はありません。
というか3Dちっくな編集ができる機能なんて、ほとんどの有料動画編集ソフトについていないので
むしろこんな機能がついているAviUtlが異常です。「無料ソフトでここまでできるのかよ」っていう。
エフェクトのかけ方
エフェクトのかけ方にも違いがあります。
AviUtlの場合は
- オブジェクトに直接かける
- タイムラインにエフェクトを設置する
という2パターンでエフェクトをかけます。(参考:【AviUtl】エフェクトの掛け方と使い方)
Vegas Proの場合は
- オブジェクトに直接かける(ビデオイベントFX)
- メディアファイルに直接かける(メディアFX)
→例えばA.mp4というファイルにエフェクトを適用すると、プロジェクト内で読み込まれているA.mp4すべてにエフェクトがかかるみたいなこと - レイヤーに直接かける(トラックFX)
- プロジェクト全体にかける(ビデオFX、マスタFX)
→例えばコンストラストをあげるエフェクトを適用すると動画全体にわたってコンストラストが上がるみたいなこと)
という4パターンでエフェクトをかけれます。
Vegas Proのほうが種類が多いので「Vegas Proのほうが優れているのでは・・?」と思いますが、これについては優劣はないと思います。
なぜかというとAviUtlの「2.タイムラインにエフェクトを設置する」でエフェクトをタイムラインに設置できれば
- プロジェクト全体にかけることも、
- レイヤーに直接かけることも
できるからです。
カット機能
これはダントツでVegas Proが勝っています。
Vegas Proには
- トリム機能(カーソルの右側をすべて削除するみたいな機能)がある
- リップル機能(削除した部分を自動的に詰める機能)がある
- 動画と音声を同時にカットできる(AviUtlはショートカットで削除する場合、片方ずつしか削除できない)
という感じで快適にカットするための機能がいろいろあったりします。
あとVegas Proのほうはタイムラインの音声イベントに”音の波形”が表示されるので
「ここからここは無音だから全部カットしてOKだな」みたいな感じでカットがしやすいです↓。
ネットの情報量
AviUtlはネットの情報が膨大です。
なぜなら歴史のあるソフトで、いまでも使用しているユーザーが多いからです。
それに対してVegas Proは動画編集ソフトの中でもかなりマイナーな方なので、ネットで検索してもほとんど情報がありません。
見つかったとしても、ほとんどが分かりにくい日本語で書かれている公式サイトしかヒットしません。
(正直、これがVegas Proの一番のデメリットかもしれません。)
私の場合 → どちらも使い分けてます
私は有料動画編集ソフトをVegas Proしか持っていないのですが
「有料だからVegas Proのほうがすべて優れている」というわけではないので
以下のような感じで使い分けています。
- AviUtlを使う場合:
- AviUtlにしかない映像エフェクトが使いたい場合
- 字幕を大量に入れなければいけない場合
- Vegas Proを使う場合:
- 高解像度(4k以上)の動画を編集する場合
- カット編集を大量にしなければいけない場合
私の慣れの問題かもしれませんが、字幕を入れる作業はAviUtlのほうが格段にやりやすいので字幕を大量に入れなければならない場合はAviUtlで行うようにしています。
AviUtlのほうが字幕のエフェクトも豊富ですしね。
ちなみに両方の編集ソフトを使う場合は
- Vegas Proで動画編集する
- Vegas Proで可逆圧縮コーデックを使って動画を無劣化出力する
- それをAviUtlで読み込んで動画編集する
- AviUtlでMP4(H264)出力する
という感じで「Vegas Proで編集したものを無劣化出力してそれを再度AviUtlで編集する」という2段階で編集しています。
まとめ
というわけで色々書いたわけですが、「結局のところVegas Proっていいの?」と訊かれると
「6万円も出すくらいならいっそのことAdobe Premireとかを契約したほうがいいのでは・・」って感じだけど、激安セールで1万円くらいで買えるなら絶対に”買い”だよね
というのが個人的な感想です。
とりあえず
- 「今までAviUtlを使ってきたけど高解像度の動画を編集するのに限界を感じてきた」
- 「なにか別の動画編集ソフトを使ってみたい」
みたいな人には、わりとVegas Proはオススメかもしれません。
セールのときに買えば激安ですし、この2つのソフトって似てる部分が多いので、AviUtlが使える人なら割と直感で操作できるので。
このページの情報は以上です。
コメント
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